2013年7月20日

My毎日記 【尊敬する音響屋】

音響の仕事を始めてから、多くのエンジニアのオペレートを見てきた。
大抵の場合は
「なるほど。そういうアプローチをするんだね」と思う事が多い。
「自分の方が良い音を出すな」と思う時もあれば勿論、悔しいと思う時もある。
そんな中でも圧倒的に上手いオペレートで尊敬している人物が3人いる。
名前は伏せるが
1人は、アコースティックという音響会社のエンジニア。
バンドと共に最高の音を目指す姿勢や迫力ある音が素晴らしく
又、アコースティックという音響会社はエンジニアにとって最高の会社だと思う。
もう1人は、クレアブラザーズという音響会社のエンジニア。
ライブハウスで見させて貰ったが丁寧で緻密なオペレートで真の職人だと思った。
この人になら金を払って任せたいという音に圧倒的な説得力があった。
そして、3人目は以前、僕が働いていた音響会社の先輩だ。
先輩には多くの事を学んだ。
仕事への姿勢。OFFの大切さ。人に気を使うという事。。。。

ひとつ、印象的なエピソードがある。
小規模な夏の野外イベントで、先輩と2人で地方に行った時の事。
その日のステージは演奏だけでなく、ダンスや劇なんかもある
野外イベントのステージで先輩はオペレート、僕はステージを担当していた。
出演者の中に名前は忘れたが有名なバイオリニストがいて
その人の出番になり、ステージで準備中にマイクのセッティングをしている時に
先輩はバイオリニストに向かって言った
「このマイクは立ててあるだけでスピーカーから音は出しませんから」
その日、使っていたスピーカーのクオリティ、
聞かせなきゃいけないお客さんへの音量などを考慮した結果
『最高の音を聞かせる為にはスピーカーから音を出す必要は無い』
という結論を平然と出したのだ。
耳の肥えたジャズバーのオーナーが
「最高のバランスだ。もうこれ以上、何も変えてほしくないから
席について酒でも飲んでてくれ」と言わしめる程の
オペレート能力がある先輩が出した『音を出さない』という選択。

今でも尊敬している。